中国メディアはレアアースを米中貿易戦争の切り札になるとして、輸出規制をほのめかしています。
これへの海外(中国)の反応と日本の反応を見てみました。
米中貿易戦争でレアアースは中国の切り札に?
トランプ大統領の攻勢でますます激しさを増す米中貿易戦争で、中国の切り札としてレアアースの輸出規制を検討しているとの情報が出ています。
これはありうるのか、中国国内の反応を調べてみました、
まず、なぜ中国がレアアースを切り札とすることができるのかを見てみましょう。
「レアアース」とは、希少金属のうち、「希土類」と呼ばれる17種の元素グループのことで、高性能磁石の原料となる「ネオジム」や磁石の耐熱性を高める「ジスプロシウム」など、電気自動車、高性能家電、パソコン、スマートフォンといった先端製品に不可欠の原材料になっており、今後も更なる需要拡大が予想されています。
中国のレアアースの埋蔵量は圧倒的な世界一で、生産量も世界全体の7割を占めるという独占的な地位にあります。
米国はレアアース需要の80%を中国からの輸入に依存しているとも言われています。
<2010年の日本のレアアース危機の顛末>
2010年9月7日 尖閣諸島沖で操業の中国の漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりする事件発生し、船長を公務執行妨害の疑いで逮捕した。
9月24日 これに反発する中国政府の通告によって日本に対するレアアースの輸出が停止されたとメディア報道。
レアアース価格高騰 (1kgあたり)1月911円⇒9月2964円⇒11月3728円
この後、日本の産業界では、以下の対応策を取りました。
・中国以外のレアアース供給源の確保 オーストラリアなどからの供給が本格化
・代替材料の開発
・レアアースのリサイクル、「使用済み製品からいかにレアアースを回収し再利用していくか」
この結果2012年の日本のレアアース輸入量は2010年の34%まで落ち込み、価格も大幅に下落しました。
当時、中国国内の関連企業が倒産したとの報道が相次ぎました。
2014年8月にはWTOのパネルで中国のレアアース輸出制限と輸出税がWTO協定に違反するという判断が下りました。
2015年には、ほぼ2009年並みの価格水準となり、供給問題は解消しました。
<これまでの日本企業の具体的技術開発>
信越化学工業は磁石に使うレアアースの量を減らしリサイクルも強化しました。
トヨタ自動車は18年、ネオジムの使用量を半減し、高温下でも磁力が損なわれない新型磁石を世界で初めて開発しました。
トヨタグループのジェイテクトはネオジムとジスプロシウムを使わずに高出力を維持できる埋め込み磁石型のモーターを19年1月に開発しました
日本電産は、レアアースが原料となる永久磁石を使わないスイッチトリラクタンス(SR)モーターを開発しました。
三菱マテリアルは2016年にエアコンや洗濯機、冷蔵庫などのモーターからネオジムなどのレアアースを使った磁石を回収する技術を開発しました。
中国にとって、レアアースの輸出規制が諸刃の剣となり、失敗に終わった事例です。
対米レアアース輸出規制手段への中国の反応
専門家(司馬平邦)の意見(微博2019/5/30参照)
貿易戦争から科学技術戦争までの中国とアメリカ、これは不変の現実であり、そしてアメリカは積極的な攻撃者であり、攻撃者の立場にある中国はまた対応し、反撃しなければならない。
しかし、次の2点に注意が必要だ。1.レアアースなどの中国の製品について輸出税と輸出割当制限の実施は、WTOルール違反とされ(2014年)、中国は、上訴しなかった。中国がレアアース資源の輸出を再び制限し、米国の貿易戦争と戦うために資源を使用したいのであれば、まずWTOをどうするかを考えなければいけない。
2.レアアース資源業界は民営化されており、この人々は、これで生活している。米国の利益を損なう前に中国国内の業界団体の利益を損なうことになる。
対米レアアース輸出規制への中国の反応
WTO違反しているのは米国ではないか、国家戦略の前に民間の利益は問題外などと専門家の意見に強く反発しています。
出典:微博
レアアース対中依存低下をとの米国商務省報告書の記事に対し
レアアース米国の対応へ日本の反応
早急に進めてほしい。
しか見てなかったってことかな。
出典:ヤフコメ
日本には、代替技術もあり、その後日本の海域で膨大な埋蔵量のレアアースが発見されたため、米国を諫めるほどの余裕のコメントが出ています。
まとめ
米中貿易戦争でレアアースは中国の切り札になりうるかについて、海外の反応を含めてまとめました。
中国でも、そう簡単ではないと言うのが専門家の意見のようです。
日本も、あの2年の経験と技術があるとはいえ、レアアースの価格が世界的に高騰したりすれば無傷では、いられません。
米中の動向を注視してゆく必要があります。
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