集積所でのカラスのゴミ荒らし対策には、ネット(網)での防御の外、カラスは黄色が嫌いとの神話があったり、「カラス侵入禁止」警告文で追い払えたなど話題に事欠きません。
カラスの習性を考慮して今ある方法の中で、何がベストなのか探ってみました。
=目次=
カラスのゴミ荒らし対策にネットの効果は?
カラスのゴミ荒らし対策に、ネット、黄色いゴミ袋や警告文の効果を見て行きましょう。
我が町でも、ゴミ集積場を荒らすカラスに、ほとほと手を焼いています。
そこで、全国各自治体や個人で、これまでどのような対策が取られてきたのか、その効果を含めてまとめてみました。
<わが町の現状>
・半透明の指定ゴミ袋をネットで覆う
各家庭から持ってきた可燃物のゴミ袋(合計20~30個)を緑色のネットで覆っています。
持ってきた人がネットの中にゴミ袋を積んで、ネットをかけることになっています。
ネットが風で、まくれたり、袋の一部がネットから出ているとそれをカラスが狙い、中身が散乱する悲惨な状態となります。
そこで、ブロック片を周りに5,6個置いています。
毎回外し、また置く作業が必要となるため、完全ではない場合があり、2週間に1度の割合で、カラスに荒らされた悲惨な状態になります。
特に、高齢者や通勤を急いで車を止めて置いて行くひとは、周りの数個のブロックをきちんと置くことができず、
しばしば袋がはみ出るなど不完全な状態になります。
日本でゴミを荒らすのは、くちばしが太く「カァカァ」と鳴くハシブトガラスです。
このカラスの習性を利用したゴミ対策として次の4つが挙げられます。
1.餌になるゴミがあると気付かせない。
2.物理的にゴミに触れないようにする。
3.カラスが忌避するもので追い払う。
4.カラスが活動を開始する前にゴミを回収する。
餌になるゴミがあると気付かせない
カラス臭覚は発達しておらず、視覚で、ごみのえさを判断しています。
以前ゴミ袋が黒色で中身が見えないころには、カラスの被害はほとんどなかったと聞いています。
ところが、間違ってゴミを出す人の対策として、自治体が、半透明のごみ袋を指定したころから(有料化の場合も)カラスの被害が急増しました。
・黄色い半透明袋が有効で自治体で採用
東京都杉並区が2005年2月から行った実験の結果、黄色い半透明袋が荒らされる例は普通の半透明の袋の約15分の1となりました。
そこでその年の10月から推奨袋として認められ、現在もHPに掲載されて、購入できます。
これは、動物形態学の専門家の宇都宮大学の杉田昭栄名誉教授と大倉工業(化学メーカー)など2社が共同開発したもので、人には中身が見え、カラスには見えない黄色い半透明ごみ袋を利用したものです。
その特許から内容を確認しますと以下のようになります(特許4898998号)
(1)明度(明るさ)及び色相(色味)を特定の範囲に限定することで、人には視認できるがカラスには視認できない領域を特定することができます。
色としては、黄色、黄緑色、緑色、水色となる。
(2)カラスは視認できるが人間には視認できない紫外線領域の光をカットするため、酸化チタンや酸化亜鉛を特定量混ぜる。
(3)表面の反射(鏡面光沢度)をある範囲とする。鏡面光沢度は高いほど中身が見えない効果はあるが、人の視認が難しくなる。
以上を組み合わせたのが特許に基づいて製品化された黄色い半透明ゴミ袋で、「カラスシャット」として市販されています。
その他の自治体では、
平成18年 平塚市内団地においてカラス対策袋カラスシャットが採用されています。
2017年9月 京都市では、家庭ごみ有料指定袋制となり、黄色半透明ごみ袋が指定されています(カラスシャットかどうかは未確認)。
名古屋市許可業者用事業系可燃ゴミ袋として、黄色半透明ごみ袋を指定しています。
なお、青森市では以前、明確な効果が立証されなかったとしてこのごみ袋の採用を見送っていましたが、平成28年4月1日から青色半透明のごみ袋に替わり、黄色半透明の「指定ごみ袋」を使用することに切り替わりました(カラスシャットかどうかは未確認)。
ネット上では、ごみ袋の内側に新聞紙を入れて中身を見えないようにするなどの体験談が出ていますが、回収業者が中身を確認できないため、皆がやりだすと袋を半透明にした意味がなくなります。
黄色が良いと言うことで、ネットを黄色にするところもありますが、上記原理からすると効果は全く望めないでしょう。
物理的にゴミに触れないようにする
ネット以外では、蓋の着いたゴミ収納ボックス(折畳式など)、蓋の着いたポリバケツなどがあります。
ゴミ収納ボックス:集積場所用だとかさばり、設置費用もかさむ。ゴミ回収に手間がかかる。
通学路など場所を取り危険(折り畳み式だと手間がかかるなど)。
蓋の着いたポリバケツ:大型になり、業者が底から取り出しにくい。
転ばぬよう底に重りを入れる、蓋を確実にするなどの手間がかかります。
ネットには周りに重しのチェーンがついたものもあり、貸し出している自治体もありますが、大型のネットになると重さが3kgを越えるなど扱いが難しくなります。
カラスが嫌う物を使って,防除する
カラスが嫌う物としては、炸裂音,爆発的な光,ひらひらして光るもの(CD)、唐辛子成分、見つめる人間,オオタカ,フクロウなどがあります
先日テレビで、「カラス侵入禁止」と書いた警告文で、東大の研究施設にカラスが入らなくなった事例が紹介されていました。
カラスが文字を読めるのかと立ち止まった人がカラスを眼でさがすと、襲われるかと人の視線を嫌うカラスが逃げて行くのだと言います。
ただし,これらの方法で得られるのはいずれも一時的な追い払い効果の可能性が高いと思われます。
それは、あとで、述べますように、カラスは学習能力が非常に高いからです。
カラスが活動しない夜間にゴミを回収してしまう
福岡市では、「ごみは日没から夜12時までに出してください」として、ごみを夜間に個別回収して効果を上げていたそうです。
但し、昨日の報道では、原因不明だが、カラスに襲われたり、ごみを荒らされたとの苦情が急増したとありました(2019/6/17)。
業者のコストアップや夜間の騒音などの問題があるようで(業者の声掛けは集音器などで軽減)、効果があったとしてもどの自治体でも実施できることではないようです。
結果として決定打はないようで、物理的にカラスとゴミを引き離す、視覚を利用するなどの有効と思われる方法を組み合わせることになるかと思えます。
<カラスは頭がいい>
カラスは協力体制を組むとも言います。
ポリバケツの蓋は重いので、2羽で持ち上げたり、ネットを、一羽が端をくわえて持ち上げ、他の一羽が首を差し込んでゴミ袋を引きずり出すということもあるようです。
先の、ひらひらする物やキラキラするCDなどを設置するとしばらくは近寄りません。
しかし、これは、この物体がカラスにとって危険であるかどうかを理解できないしばらくの間のことです。カラスが、1~2週間遠巻きに見ていて、近寄っても危害が無いと判断すれば、今度はあっという間にやられてしまうようです。
半透明の黄色いごみ袋も、カラスに中身が見えなくても、つつけば、かなりの確率で、エサが出てくることを学習すれば、その効果は半減するかもしれません。
次は、知人がカラスとかかわった実体験です。
・自転車での出勤時、ゴミ集積場でカラスが一生懸命、中の物を袋から引っ張り出しているのを見ると、自転車をごみ置き場に方向を変え、カラスを蹴散らしていました。
ところがある日、蹴散らした後、を、橋のスロープ(5階建てぐらいの高さ)を、自転車を押して、上まで上がった所で、カラスに思いっきり、糞をかけられました。
そこまで追いかけてきていたのです。匂いがとれず、おかげで、お気に入りのジャンパー、高いショルダーバッグ全て、捨てることになってしまいました。
・カラスが橋の欄干に、間隔を置いて止まって見張りしている。時々歩いている人を牽制したりしてました。
自転車で走る時、私が手を欄干に伸ばして、カラスを払っていくと、すべて逃げて行くのだが、一羽だけ戻ってきて、私の頭をわしづかみにされた。
爪は立てられなかったが、かなり、気持ち悪かった。私への警告であったのでしょう。
ゴミ袋対策の結論としては、1,2の対策を組み合わせ、且つカラスが学習する前に、方法を変化させることが肝要のようです。
カラスのゴミ荒らしへのネットの反応
出典:ヤフコメ
皆さんさんざん苦労しているようですね。
全国的に問題となっており、決め手に欠けるようです。
まとめ
カラスのゴミ荒らし対策にネット、黄色いゴミ袋、警告文などの効果を見てきました。
袋も単なる黄色であれば良いというものではなく、ましては、黄色のネットはほとんど効果がないようです。
半透明の紫外線をカットした黄色いゴミ袋と周りに重りなどを置いたネットの組みあわせが今考えられる一番実用的な方法のように思われます。
但し、カラスの学習の様子を見ながら、方法を次々と修正してゆくことが必要となるかもしれません。
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