テニス世界ランク1位に上り詰めた新世界女王・大坂なおみ選手。大坂選手は来年に迫った東京オリンピック出場にも強い意欲を示しています。母国日本での金メダルが大いに期待されますが、ファンの間で今話題になっているのが、大坂なおみ選手の国籍選択です。
複数の国籍を持つ大坂選手ですが、今後国籍選択をどうするのか、東京オリンピックには日本代表として無事出場できるのか。そんな大坂選手をめぐる国籍問題をまとめました。
大坂なおみは国籍選択期限が迫る
ハイチ系米国人の父レオナルドさん、日本人の母環さんの間に大阪市で生まれた大坂なおみ選手は、日米両方の国籍を持ちます。
現行の日本の国籍法では、父母どちらかが日本人であれば日本国籍を取得できますが、大坂選手のように生まれた時から二重国籍である場合、22歳までに「国籍選択」を行うよう定められています。
大坂なおみ選手は1997年10月生まれの21歳ですので、今年10月が「国籍選択期限」ということになります。ただこの規定には罰則がなく「努力義務」に過ぎません。実際、既に国籍選択期限を過ぎた22歳以上の二重国籍者は約17万人もいます。
仮に二重国籍者が日本国籍の選択手続きをしたとしても、もう一方の国の国籍離脱はその国で手続きする必要があり、日本政府としては本当に離脱したのかどうか確認しようがありません。
また国によっては国籍離脱を認めないなど、国籍に関する法律は国によってまちまち。全二重国籍者を正確に把握できないのに、一部の人にだけ国籍選択を強制するのは不公平でもあり、日本政府としては「選択を呼びかける」程度にとどめているようです。
欧米では「国籍選択強要は人権侵害」といった考え方も強く、米など多くの国が二重国籍を事実上容認しています。日本と他国籍を持つ人は子供を含めると100万人近くいるとされますが、そのまま二重国籍を維持する人も多いのが実態のようです。
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オリンピックまでに決めなければならない?
大坂なおみ選手はかねて東京オリンピック出場を強く希望しています。昨年国別対抗戦フェド杯で日本代表に選ばれた際も「夢だったから感謝している。東京五輪も絶対経験したい」と話しています。
大坂なおみ選手は現在日本テニス協会所属で、登録国は「日本」です。前述のように今年10月までに国籍選択するとして、万一大坂選手が「米国籍」を選ぶと、東京オリンピックには米代表として出場することになるのでしょうか。
五輪憲章により、オリンピック代表になるにはその国の国籍が必要です。これには細則があり①複数国籍選手は自分の意志で国籍選択ができる ②ある大会にその国代表として出場し、その後国籍を変更した場合、3年間は五輪に出場できない―と決められています。
大坂選手は18年のフェド杯に日本代表として出場済みですので、規定上東京五輪には日本代表しか出場資格がありません。即ち米国籍を選ぶと出場自体できなくなります。大坂選手は既にJOCのメダル候補強化メンバーに指定されており、フェド杯代表もそのルールを理解した上での参加とみられます。
何より「愛する母や祖父母の国の代表として、その母国で開かれるオリンピックに出る」というのが大坂なおみ選手の願いなわけですから、東京五輪には日本代表として出場するのが自然だと思われます。
Wouldn’t have been able to do it without everyone. Love you guys ❤️❤️❤️ pic.twitter.com/qxdbctduUe
— NaomiOsaka大坂なおみ (@Naomi_Osaka_) January 27, 2019
大坂なおみはどう判断する?
そもそも大坂なおみ選手が日本で選手登録しているのはなぜなのでしょうか。報道によると、幼い頃に大坂選手の才能を感じた両親は、米国テニス協会に支援を要請したものの、有望選手が多い米では当時の大坂選手は埋もれてしまい、色よい返事は得られなかったそうです。
一方、母環さんからの手紙の訴えにヨネックス会長は心を動かし、用具提供などの支援を約束。日本協会も早くから大坂選手の潜在能力を伸ばそうと地道なサポートを続けてきました。こうした恩義もあり、後に大坂選手が頭角を現し、米協会が強く移籍をアプローチしてきた際にも、父レオナルドさんは「日本残留」を変えなかったといいます。
今年10月の期限や東京オリンピック後に、大坂なおみ選手が国籍選択をどう考えるかは分かりませんが、ファンの間では「グローバル化が進む中『何国出身』かは些末なことで、選手本人の力をたたえるべきだ」という声も根強いようです。
大坂なおみの国籍選択に関するネットの反応
出典:twitter
まとめ
国会議員が二重国籍だったことで、最近にわかに注目が集まったこの問題。国に奉仕し行政・立法権限を持つ議員や公務員はともかく、国際舞台で活躍するビジネスマンやスポーツ選手にとっては、むしろ二重国籍の方が有利な面もあるようです。
生産人口が減る中、日本にとって外国人受け入れや国籍取得者増加は重要な問題。制度の是非は別として、少なくとも生まれながらの二重国籍者に、無用な心理的負担を与えないようにできないものか、と感じます。
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