遊園地「としまえん」のプール「ふわふわウォーターランド」で8歳の女児が亡くなるという痛ましい事故が起こりました。
現時点で原因として最も可能性が高いと考えられている大型フロートの危険性については、以前から予見されていたとの指摘もされています。
詳細を見てみましょう。
としまえんのプール事故と大型フロートの危険性
「としまえん」のプール事故の経緯と大型フロートの危険性について見て行きます。
「としまえん」のプールで、プールの監視員が8月15日午後2時に定時の水中点検をしたところ、「ビッグアイランド」と呼ばれる遊具の下で女児を発見、救助し、搬送されましたが、溺死が確認されました。
ビッグアイランドは空気が注入された大きいフロート(浮島)の上を移動していく遊具で、プールは水深が最大1・9メートルありました。
女児はライフジャケットを着用。水中に転落後、遊具の下に潜り込んで溺れた可能性があると見られています。
筆者は水泳愛好家であり、地元で、小学生水泳教室の手伝いをしたこともあって、プールや水泳の危険性には常日頃関心をもっています。
今回の事故原因となったと思われる大型フロートについては、以前からその危険性に関心を払っていました。
それは、平成24年7月に起こった京都市立Y小学校のプールで同小1年の女児Aちゃん(6歳)がなくなった事故の記事とその後の裁判を含む記事を読んできたからです。
#としまえん の事故のニュース。
小学生の頃、別の場所の流れるプールにこのタイプの浮き輪で横になってる人がいて。潜って上がろうとしたら丁度この浮き輪の下で上がれなくて、本当に死ぬかと思ったこと思い出した…。
ご冥福をお祈りします。 pic.twitter.com/yRg5M2qJdX— 🐶✨ (@yh_623) August 15, 2019
次に大型フロートに着目して、その事件の詳細を見てみましょう。
大型フロートの危険性は予見されていたか?
京都市立Y小学校プール事故の原因究明、安全指針の策定、裁判所の判決の経緯は以下です。
平成24年7月 京都市立Y小学校のプールで事故発生。
平成25年3月 京都市教育委員会は事故を受け、独自の調査・検証により確認した課題にもとづき、「小学校における水泳指導の手引」と「小学校の水泳指導における安全管理指針」を策定。
平成25年7月 第三者調査委員会を設置。再現検証の実施児童・保護者・教職員・関係各機関への聴き取りなどを1年かけておこなう。
平成26年3月11日 両親が提訴した裁判の京都地裁判決。
平成26年7月 第三者調査委員会が調査報告書を提出。
平成27年7月 京都市教育委員会 「水泳指導の安全管理について」で再度注意喚起。
両親の要望を受け事故原因を調査した市教委は、低学年には深いプールの水位(110センチ)▽ビート板の使用方法▽監視態勢-など、複合的な要因が事故につながったとする報告書をまとめ、安全管理マニュアルを作成するなどの再発防止策をとりましたが、両親は納得せず事故原因をはっきりさせるために、裁判所に訴えました。
平成26年3月11日の京都地裁判決は、Aちゃんの死亡原因について、プールに大型のビート板(フロート)など16枚が浮かべられていた点に注目し、足のつかない深さのプールでAちゃんがビート板の下に潜り込んでしまい、そのままおぼれたと推認しました。
これ以前、平成25年3月に京都市は、この事故を受けて、「小学校における水泳指導の手引」を作成し。その中で、大型ビート板(フロート)について以下の注意を促しています。
https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000185/185493/tebiki.pdf
(5)ビート板の使用上の注意
大型ビート板(フロート)は,使用方法を誤ると重大な事故につながる恐れがあり,使用目的・枚数などを明確にして使用するとともに,使用方法には十分な注意が必要である。
【主な留意事項】
① 大型ビート板のそばで泳いだり潜ったりすると,不意にビート板が身体の上に覆いかぶさる危険性があるので,大型ビート板の近くでは十分に注意するよう指導すること。
② 大型ビート板の下に潜り込むと,ビート板を持ち上げられず,またビート板に身体が貼りつき脱出が困難になる恐れがあるため,潜り込まないように指導すること。
③ 大型ビート板の上に立ち上がると,転倒して他の児童と衝突したり,プールサイドに激突する危険性もあり,ビート板の上には立ち上がらないよう指導すること。
④ 複数の大型ビート板を近づけて浮かべると,ビート板の陰になる面積が大きくなり,監視の目が届かなくなる恐れや,児童が潜り込む危険性が増大するので,大型ビート板どうしを近づけないように注意すること。
さらに、京都市教育委員会は、平成25年7月,第三者調査委員会を設置し、現場状況の再現実験を含むかなり詳細な報告をしています。
平成26年7月 Y小学校プール事故第3者調査委員会の調査報告書には
直接的な原因として、監視体制の不備を、
監視体制に関連する要因として、以下を挙げています。
・自由遊泳時間のリスク(各教員の監視体制を困難にする)
・大型フロート(視認可能な範囲を制約する)
・騒音
・監視台の未設置
https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000185/185493/01hyoshi.pdf
【4】事故の直接的な原因の項に、自由遊泳時間の再現状況の写真があり(事故調査報告書P163-169、173)1mを超えると思える大型フロート(浮島など)がプールに多数浮かべられ、子供たちが、乗ったりしている様子が写っています。
判決や事故調査報告書を受けて、平成27年7月 京都市教育委員会は、「水泳指導の安全管理について」の通達を出し、明確に
大型フロートの原則使用禁止を打ち出しています。
【手引 P15】 【指針 P13】
https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/page/0000185493.html
以上からしますと、少なくとも、平成27年には、特に児童の足の着かないプールでの大型フロートの使用は、下にもぐって脱出が困難になる、陰になる部分が出てきて、監視の目が十分届かなくなる点から、明確にその危険性が指摘されていたと言えるのではないでしょうか。
この教訓が今回の事故に生かされなかったのは非常に悔やまれます。
としまえんのプール事故へのネットの反応
ちょうど、プールに行ってきたばかりだけど、そういう感じの場所があって、潜り込んだら怖いなぁ、と感じたよ。
出典:ヤフコメ
子どもの足がつかないプールでの、大型フロートの使用については、多くの人が以前から危険性を感じていたようです。
まとめ
としまえんのプール事故の経過と問題となった大型フロートの危険は予見されていたのでは、という観点でまとめました。
いくら監視人を増やして、一瞬たりとも眼を離してはいけないと言っても、このような遊具でどんな危険があるかということを予め、学習し、対応の訓練をしていなければ、十分な安全を確保した監視ができる訳はありません。
大型フロート自体の使用の可否も含めて、子供の水からの安全を守るためにはどうすべきかの議論が必要と思います。
最後になりましたが、今回亡くなられたお子さまのご冥福をお祈りし、二度とこのような事故が発生しないように願いたいと思います。
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