東京五輪まであと9か月弱。準備もラストスパートになる中、〝冷や水〟を浴びせる大問題が勃発しました。IOC(国際オリンピック委員会)が突如マラソンと競歩の「札幌移転」を発表。このほど組織委員会、東京都などとの協議で正式決定されたのです。
マラソンは五輪でも花形種目ですが、史上初めて開催都市以外で実施されることに。大会間近になって、この異例の決定がなされた理由は一体何なのか、分かりやすく整理しました。
東京五輪マラソンが札幌になった理由
驚きのニュースが日本にもたらされたのは10月16日。突如IOCが東京五輪のマラソンと競歩を札幌開催に変更すると発表したのです。
反発する東京都をはじめ関係者に衝撃や困惑が広がりましたが、五輪憲章でIOCの指示・権限は最上位にあると定められており、最終的に従わざるを得ませんでした。
IOCがやにわ「札幌移転」を表明した最大の理由は、直前にカタール・ドーハで行われた世界陸上の〝惨状〟です。世界陸上では9月末~10月初旬に男女マラソンと競歩が行われましたが、この時期のドーハは日中50度近くにもなる猛暑のさ中。
このため史上初の深夜スタートになったものの、それでも男子マラソン以外は気温30度、湿度70%を超え、女子マラソンや男子50km競歩では約4割の選手が途中棄権しました。
8月9日開催予定の東京五輪マラソンは早朝スタートで、気温はドーハより低い見込みとはいえ、快晴なら強い日差しが当たる恐れがあります。IOCは選手の大量脱落や命の危険があれば、五輪存続の危機にもなりかねないと、急きょ「より涼しい北日本の札幌に移転する」と決めたわけです。
かなり強引なトップダウンのスピード通達で、批判もわき起こりましたが、五輪に間に合わせるためには時間的にも今がギリギリという判断もあったとみられます。
パラリンピックマラソンは東京開催の理由
「ドーハショック」が東京五輪マラソン札幌移転の大きな理由だったわけですが、暑さが問題となる屋外競技は他にもいくつかあります。それらはどうなるのでしょうか。
今回のIOC・都・組織委員会の協議では「マラソン、競歩以外の競技会場は変更しない」ことも併せて合意されました。つまりトライアスロンや馬術などは予定通りの場所で開催されます。ただし競技時刻については早朝へ早める方向で調整するとのことです。
またパラリンピックのマラソンについても、このほどIOCと同時に来日したIPC(国際パラリンピック委員会)と組織委員会の協議で、予定通り東京で開催することが確認されました。
その理由についてIPCは「パラマラソンは9月開催で、8月より気温はずっと低く、スタート時間も午前6時半に早めているため」としています。
ただ、五輪マラソン開催日の8月9日が今年、札幌で気温22度だったのに対し、パラマラソンの9月6日の東京は28度。パラマラソンは視覚障害者、車いす部門などがあり、車いす選手は低い姿勢で熱したアスファルト近くを走行するため、「矛盾がある」「五輪以上に徹底した暑熱対策が必要」といった意見も聞かれます。
東京五輪マラソン札幌変更への最新ネットの反応
出典:twitter
まとめ
東京五輪を巡っては、真夏の開催を不安視する声は最初から聞かれました。そもそもIOCが、五輪収入の5割を占める巨額放送権料を払う北米テレビ業界に「忖度」して、7・8月開催に限定していること自体に無理があるともいえます。
最近は異常気象で夏場の高温が世界各地で続き、次々回開催都市のパリでは7月に42度を超えたことも。将来の五輪は、さらに猛暑が見込まれる東南アジアやアフリカ諸国が招致に前向きとされます。IOCが本当に「アスリートファースト」を貫くというなら、「スポンサーファースト」をやめて、都市が開催時期を選べる柔軟性も必要ではないでしょうか。
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