いったん繁殖すると打つ手がないというガの仲間ツマジロクサヨトウの特徴は?
7月3日に初確認した日本での被害はどうなる?
台湾での対応と比較してみました。
ツマジロクサヨトウの特徴とは?
ツマジロクサヨトウの特徴を見て行きましょう。
・ガの仲間で、成虫の体長は約4センチ。
・1カ月で世代交代するほどの高い繁殖能力を持ちます。
・成虫の場合1晩で100キロメートルを飛翔して移動することができます(追い風があれば200キロも)。
・イネ、トウモロコシ、サトウキビ等のイネ科の植物を好みますが、カブやキュウリ、トマト、ナス、サツマイモ、大豆など広範な植物を食い荒らします。
いったん繁殖したツマジロクサヨトウに対しては打つ手がないのが現実で、駆除を試みたこれまでの対策は、ほとんどが失敗に終わっているとも言われています。
これはアフリカでの大流行時に、使った殺虫剤によって、ガに耐性ができたため、現時点では防除に使える殺虫剤がないようです。
・熱帯原産の虫で寒冷地では越冬できない。
・人や家畜が食べても健康を害することはない。
即ち、繁殖力が高く、その飛翔力で、広い範囲に素早く拡散し、駆除する殺虫剤も有効なものがないという厄介な外虫です。
世界の拡散経路と被害の実態
<ツマジロクサヨトウの拡散経緯と被害>
南北アメリカ大陸の熱帯~亜熱帯を原産とします。
2016年 アフリカ(サハラ以南)で猛威 十数カ国に被害が広がり、ジンバブエでは作物の70%に被害が出た地域もありました。
アフリカ諸国の被害額は、24億~61億ドル(約2672億~6792億円)に上る見通し(CABI)。
2018年8月 インド南部カルナタカ州や、隣接するタミルナドゥ州で確認されました。
2019年1月 ミャンマーから中国雲南省へ侵入。6月までに、黄河の南側の18省区市へと爆発的に拡散した。7月には北東部のトウモロコシ栽培地に到着しました。
5月中旬時点の農作物被害面積は湖南省で約1,330ヘクタール、福建省で約6.7ヘクタールなどとなっています。
2019年6月8日 台湾、北部・苗栗県で幼虫が初めて見つかりました。
6月21日までに台湾中部・南投件、南部・嘉義市を除く台湾全域の151カ所で確認された。
2019年7月3日 鹿児島県南九州市の農場の飼料用トウモロコシで、イネやトウモロコシに寄生する害虫のガ「ツマジロクサヨトウ」の幼虫が日本で初めて見つかりました。
<各国での対策>
アメリカ:虫に毒性がある遺伝子組換えトウモロコシによる商業栽培を行っている。
中国:天敵カメムシの大量生産。カメムシ類が1日で最大41のツマジロクサヨトウの幼虫を殺すことができると発見し、植物保護研究所は、年間1000万匹のカメムシ類を繁殖させることができる工場を設立しました。
台湾:見つかった151カ所のうち、75カ所で焼却、埋却処分、56カ所で農薬散布などを行ったということです。
今後の日本の被害予測と対策
7月3日に日本で、初めてツマジロクサヨトウが見つかって、5日が経ちますが、現在のところ
農林水産庁関連で、ツマジロクサヨトウについての情報は、次の通りです。
植物防疫所の「ツマジロクサヨトウの発生の確認について」のみで、鹿児島県南九州市での発生の知らせと以下の注意書きがあっただけです。
「万一、ほ場等で見慣れない症状や害虫を発見された場合は、最寄りの植物防疫所(PDF:25KB)あるいは各都道府県の病害虫防除所等に必ずご連絡いただきますようお願いいたします。」
また、植物防疫所の以前の情報は、次の通りです。
「我が国が特に侵入を警戒している病害虫の特徴」ツマジロクサヨトウの項(6月14日更新)には、
「本虫は、海外の知見等によれば、これまで国内で発生しているヨトウムシ類と同様、的確な防除の実施により被害の軽減が可能であると考えています。」
農水省は「海外では農薬の散布頻度が増え、耐性につながった。有効な農薬を適切に使えば駆除できる」と説明。ガが嫌がる作物や天敵となる虫なども調べ、対策に役立てるとしている。」と報道されています。
一方、6月8日に見つかった台湾では、
・6月下旬に台湾に向かって流れ込む南西からの季節風でツマジロクサヨトウの幼虫が飛ばされて来る可能性があることを警告していた。
・台湾全土500ヶ所に観測装置を設置し、ツマジロクサヨトウの侵入を監視していた。
そして、6月初めに侵入を確認してからは、
・通報先として通報専用ダイヤル、あるいは動植物防疫検疫局のフェイスブックページ動植物防疫検疫局の公式LINEアカウントなど、音声による通報のほか、写真・動画の提供などによる通報も受け付けています。
さらに、スマホ用通報アプリ「農作物天然災害即時回報」を追加し、疑わしい虫体の写真をアップロードすると、GPS機能でその位置を知らせることができ、鑑定や確認に必要な時間を短縮することが出来るようにまでなっています。
・また、1件の通報につき1万台湾元(約3.4万日本円)の報奨金を提供することになりました。
台湾のネットには、5月14日の初確認の前の時点で、世界での拡散地図、虫の写真を含む特徴など詳しい情報が載っています(台湾語:秋行軍蟲)。
台湾に相当する情報の周知、対策が日本ではほとんどなされておらず、危機感がないように思えます。
ツマジロクサヨトウの好むコメは日本人の食の中心です。
「有効な農薬を適切に使えば駆除できる」と本当に言えるのでしょうか?
日本も温暖化が進み、中国南部や台湾と気候が違うので、被害がそれほどないだろうとは言えなくなっています。
ツマジロクサヨトウ日本侵入へのネットの反応
早めの対応をお願いします!
出典:ヤフコメ
まとめ
ツマジロクサヨトウの特徴をまとめ、日本の被害はどうなるかを予測しました。
非常に懸念しています。
台湾で、6月初めにツマジロクサヨトウを最初に発見し通報したのは、農業とは関係のない半導体メーカーに勤める張さんという若者だったそうです(Taiwan Today参照)。
以前からこの害虫が農業に大きな被害を与えると気にしており、写真なども見て特徴をつかんでいたそうです。
彼はいまや台湾では、英雄になっているそうです。
翻って日本の現状は、危機感を持って、その農業に及ぼす影響や、姿などの特徴を把握している国民がどれだけいるでしょう。
通報先は電話番号があるとはいうものの、台湾のような積極的なこの害虫に関する広報がなされているとは言えません。
早急に対策を立ち上げないと、1月後には悲惨な状態になっていて、この秋のコメの収穫を気にする事態になっていてもおかしくないのではと心配してしまいます。
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