経済産業省が、貿易仕向け地区分で、韓国をトップの「い地域」から「り地域」へ移動させました。
これがネットで、韓国の信用度を経済産業省が最下位にしたと話題になっています。
果たして本当なのでしょうか?
り地域とは?
り地域とは何を意味するのでしょう?
り地域指定が。韓国の信用度を、核へいきなどの大量破壊へいきの製造・開発疑惑が持たれている、北朝鮮・イランの「ち地域」よりも更に低く「ぶっちぎりの最下位」とみなしたからだとネットで話題になっています。
しかし、韓国をホワイト国から除外するかどうかは、パブリックコメント募集中で、これを踏まえて改正する手順となっており、経済産業省が別途勝手にやるとは思えません。
まず貿易仕向け地域分類の意味を確認しましょう。
貿易仕向け地とは、商品・貨物などの送り先の国のことです。
日本が輸出する様々な製品が、テロリスト等に渡ってへいきとして使用されたり、核へいきの製造に用いられると日本の安全保障にとって困ったことになりますので、紛争地域など危険性の度合いにより仕向け地域に、異なった輸出許可の申請書の提出を求めています。
これが貿易仕向け地域分類を必要とした理由です。
では、経済産業省の安全保障貿易管理の仕向け地の各国の分類を具体的に見てみましょう。
「い地域①」のアイルランド、アメリカ合衆国から始まり、「い地域②」ウクライナ、エストニア・・と「いろは」順に国が区分されています。
特に目につくのは、今回「り地域」が新設される前は、地域区分の最後尾では「ち地域」で、所属する国は、明らかに危険な紛争地区、アフガニスタン、イラク、イラン、北朝鮮、コンゴ民主共和国、スーダン、ソマリア、中央アフリカ、リビア、レバノンが並んでいます。
以前の「い地域①」の構成国は、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、 ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、大韓民国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国の27か国でした。
一方で、ホワイト国とは、輸出貿易管理令別表第3に掲げられている国で、キャッチオール規制の規制対象外となる(いちいち経済産業大臣の許可を必要としない)地域であるとされており、これが、以前の「い地域①」27か国と完全に一致します。
これが、韓国をホワイト国から信頼度最下位国に突き落としたとの憶測を生んでいるわけです。
韓国はいつからり地域?その前は?
韓国のみが対象地域となる「り地域」は、3品目の輸出規制強化が叫ばれた2019年7月1日公布され、4日に新設されました。
同時に「い地区①」から韓国は削除されています。
今回の韓国のみが対象地域となる「り地域」新設は、「輸出貿易管理令の運用について」等の一部を改正する通達によっています(令和元年7月1日公布し、7月4日施行)。
変更の目的を「・・・輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、・・・日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。
こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になって
いることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したことも
あり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこ
ととします」としています。
<韓国のみを新設した「り地域」にした理由とは?>
仕向地の分類は、輸出申請手続きをスムーズに行うための、必要書類提出の窓口のようなものと考えられ、特に「いろは」順で優劣をつけたわけではありません。
例えば、韓国はアメリカ合衆国と同じく「と地区①」にも所属しています。これらから言っても、仕向け地の順番が国の信用度順とは言えません。
例えば、いちいち経済産業大臣の許可を必要としない「い地区①」の輸出申請手続きと、紛争地域で、厳しく許可条件を見極めなければいけない「ち地区」では、提出書類、手続き方法、審査期間など全く異なると考えられます。
窓口を別にして、それぞれ対応する担当などを分けた方が、申請側も、受け付ける側も手続きがスムーズに行くと思われます。
今回の「り地域」新設は、フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目の大韓民国向け輸出等を包括許可の制度の対象から外し、それぞれについて個別許可申請を求め、輸出審査を行うことに伴い必要となった処置なのです。
例えば、フッ化水素は、「輸出令別表第1の3の項(1)に掲げる貨物のうち、貨物等省令
第2条第1項第一号へに該当する貨物」そのものであり、
管理令の運用を
「安全保障貿易審査課において輸出の許可を行う貨物
(5の2)輸出令別表第1の3の項(1)に掲げる貨物のうち、貨物等省令
第2条第1項第一号へに該当する貨物であって、「り地域」を仕向地とするもの」と改正することで、韓国のみが所属する「り地域」の輸出の許可審査を行えるようになると言うことになります。
即ち、フッ化水素を仕向け地韓国の場合のみ、安全保障貿易審査課において輸出の許可を審査するには、韓国のみが含まれる「り地域」の新設が必要だったのです。
同様の改正がフッ化ポリイミド、レジストについて追加されました。
<韓国をホワイト国から外すこととの関係>
通商産業省の意図は、韓国がホワイト国から外れた時点で、「り地域」で審査すべき貨物をいくらでも追加できるようにするという点にあると思われます。
例えば、次のターゲットと言われている半導体製造装置も該当する貨物等省令の箇所を追加すれば同様のことが可能となります。
日本が、韓国の出方によって、自由なさじ加減で、規制を強化できるというところに、今回の仕向け地「り地区」新設の肝があるように思えます。
韓国り地域に関するネットの反応
出典:ヤフコメ
なんだか解釈が錯そうしています。
先に書きましたように、い地域=ホワイトではありません。また、何人かの方が疑問を感じられているように、り地域=最低ランクの危険地帯というのでもありません。
まとめ
韓国を「り地域」とした本当の理由をまとめました。
フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの輸出規制強化のための手続きの一環であるというのが主な理由であると考えました。
大韓民国との信頼関係がなくなったために、輸出管理制度を改めると言うのが今回の改正の基調にありますので、信頼が回復されない限り、輸出に当たって許可申請が必要な項目が今後どんどん増えて行くことになるのではないでしょうか?
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