世界最速タイで3階級制覇を成し遂げた現WBOフライ級王者・田中恒成選手に、元ライトフライ級王者・田口良一選手が挑戦するタイトルマッチが、16日、岐阜市の岐阜メモリアルセンターで行われます。
田中選手にとって、大先輩の田口選手はプロデビュー以来憧れの存在。17年に一度タイトル戦が組まれましたが、田中恒成選手の怪我で流れ、田中選手が切望してようやく実現した「運命的一戦」です。
互いの深い思いがこもる闘いに臨む二人の戦績や、試合予想をまとめました。
田中恒成の戦績・強さ
田中恒成選手は1995年岐阜県出身の23歳。中京大に在学する異色の「学生プロボクサー」でもあります。
幼稚園から空手を、小学生でボクシングを始め、中京高でボクシング部へ。国体2連覇、インターハイ優勝など高校4冠の強さで天性の才能を現します。
高校時代にプロテストに合格しミニマム級でデビュー。日本男子最速の4試合目で東洋太平洋王座、世界最速の5試合目でWBOミニマム級王座を獲得します。
ライトフライ級に階級を上げた16年、フエンテス選手とのWBO同級王座決定戦を制しプロ8戦目で世界最速の2階級制覇を達成。さらに18年にはフライ級に上がり、9月、WBO同級王者木村翔選手に挑み判定勝ち。あの「P4P」ロマチェンコ選手に並ぶ世界最速タイの、プロ12戦目での3階級制覇という偉業を成し遂げました。
プロ戦績は12戦12勝無敗(7KO)。田中恒成選手の強みは軽量級離れした強烈な左ボディや鋭いワンツーとスピードです。先日の公開練習でも軽快なフットワークで順調さをアピール。怪我も「問題ない」といいます。
そんな田中選手が次戦にかける思いはひとしおです。その背後には怪我のアクシデントに始まり紆余曲折を経た実現への道のりがありました。
怪我で一度は流れた田口良一との試合の予想は?
田中恒成選手が挑戦を受ける田口良一選手は32歳。元WBA・IBF世界ライトフライ級統一王者で、戦績は32戦27勝(12KO)3敗2分です。
田中選手がデビューした頃には既に日本王者。そしてその年田口選手は、当時19歳だった、後の〝怪物〟井上尚弥選手の挑戦を受け、判定負け。しかし強打の井上選手から逃げず打ち負けなかった強さは、田中選手の心に「いつかあの人と戦いたい」との思いを灯したそうです。
17年、その願いが実現しかかります。WBO王者となった田中恒成選手がWBA王者・田口選手と統一戦を行う運びに。ところが同年9月のWBO防衛戦で田中選手は眼窩底骨折の大怪我を負い、試合は白紙になります。
対戦を熱望していたのは自分だけに、情けなさのあまり田中選手は東京のジムに行き田口選手を「出待ち」して直接謝罪したそうです。田口選手も「知的で律儀な好青年だな」と好感を持ったといいます。
その後2団体統一王者となった田口選手ですが、昨年、国内初の統一王座防衛戦に敗れ2冠を一挙に失う事態に。引退もよぎったものの、田中恒成選手の気迫ある3階級制覇を目の当たりにして「気持ちをつかまれた」(田口選手)。こうしてお互いが曲折の末、再び「相思相愛」で対戦の実現へと結実したわけです。
では16日の「運命の一戦」の予想はどうでしょうか。田口選手は井上尚弥戦でのような、接近戦でも打ち負けないスタミナや多彩な技術が持ち味。メディアなどでは、田口選手の接近戦と田中選手のスピードとカウンターの勝負になるとの見方が多いようです。
ライトフライ級で減量に苦しんだ田口選手は、階級を上げて適正体重になったといわれ、王者田中選手といえども、フライ級に慣れてないこともあり「判定までもつれる僅差の試合となる」との予想もあります。
田中恒成のネットの評価
出典:twitter
まとめ
念願の一戦が初防衛戦となる田中選手。ただその視線はさらに先に向いているようです。それはスーパーフライ級での4階級制覇を目指している井岡一翔選手。
井岡選手について「頭にある。ボクサーとして純粋にかっこいいし、尊敬している」と田中選手。井岡選手は昨年末に4階級への初挑戦に失敗しましたが、場合によっては来年にも同級で4階級をかけた日本人スーパーマッチが実現するかもしれません。
将来的に5階級制覇も見据えるという田中選手。久しぶりに日本ボクシング界にも世界を沸かす実力者が次々と登場してきました。
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