米MLBでは来月からスプリングキャンプが始まります。手術した右肘リハビリのため、今季は打者に専念するエンゼルスの大谷翔平選手も参加し、開幕メジャーに向けた良い調整が期待されます。
さて大谷翔平選手は普段から読書好きで知られ、恐らくこのオフも多くの本を通読したのではないかと思われます。そんな大谷選手の愛読書の一つとされるのが、中村天風著「運命を拓く」です。一体どんな本なのか。読者レビューから大谷選手が愛読する理由を探りました。
中村天風の運命を拓くとは?
読書好きな大谷翔平選手の愛読書の一つといわれる「運命を拓く」。著者は明治から昭和にかけて実業家や思想家として活躍した中村天風(てんぷう)です。
中村天風(本名三郎)は1876年東京生まれ。少年期に福岡市の親戚に預けられ修猷館中(現福岡県立修猷館高)に入学、剣術や英語を習得します。在学中に他校生を刺殺する事件を起こし退学。当時有名な右翼団体「玄洋社」に入り武闘派として頭角を現します。
折しも日露戦争前夜。天風はわずか16歳で日本陸軍の諜報員となり満州でスパイ活動に従事しますが、敵兵に捕まりすんでのところで銃殺を免れます。
その後は重病を患い、世界を放浪して思索を深めたり辛亥革命に関わったり、かたや日本で銀行頭取を務めるなど波瀾万丈の人生を送り、後半生には自らの思想や自己啓発法を広める活動を進め、1968年に92歳で他界しました。
「運命を拓く」は、このように若い頃死線をかいくぐり、世界を旅しても得られなかった人生の意味を、ある時遂に「積極的人生」として著者が会得した、その教えを説いた書です。
中村天風の書物や思想には、東郷平八郎、原敬、双葉山といった「歴史上の人物」から、松下幸之助、稲盛和夫氏、広岡達朗氏ら現代の経済界・野球界に至るまで、幅広い著名人が影響を受けたといわれます。
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— 中村天風財団(公益財団法人天風会) (@tempukai) July 12, 2018
運命を拓くのレビューを紹介
大谷翔平選手も愛読書に挙げる中村天風著「運命を拓く」。講談社文庫版のAmazonカスタマーレビューから、読者の反応を拾ってみました。
出典:Amazon カスタマーレビュー
大谷翔平の愛読書である理由
中村天風の「運命を拓く」。天風の教えの核は、今で言う「ポジティブ・シンキング」といえるようです。辛いこと悲しいことも多いのが人の一生ですが、悲観的に捉えず「積極性を発揮して大いに欲望の火を燃やす」ことが、人生を切り開く秘訣だと説きます。
すなわち、心の置き所一つで人生は変わる。そして自分の人生の理想は明瞭に描き、そこへ向かって一心に進むべきだといいます。
大きな目標を掲げ、それに向かって前向きに努力していけば道は拓かれる。そんな天風が示した「生き方の極意」は、まさに大谷翔平選手らトップアスリートが追い求める理想そのものであり、愛読書に選ばれる理由なのではないでしょうか。
中村天風に詳しい識者は「経営者もスポーツ選手も明確な結果が求められる世界。常に周囲からの期待や批判にさらされ、失敗すれば叩かれる。その孤独さは想像を絶するもの。だからこそ己の『信念』を失わず、ブレない正しさを説く天風の教えに惹かれるのではないか」と分析しています。
まとめ
大谷翔平選手の読書好きは、師匠である高校時代の監督や日本ハムの栗山監督の影響も大きいようです。唯一の国立大卒監督で小中高の教員免許を持つ栗山氏は、「幅広い考えを持つべきだ」と選手に読書を強く促すことで有名です。
昨年の渡米前、大谷選手が寮で荷造りしている際、監督が「最近どんな本を読んでるの?」と聞いたところ「運命を拓く」のほかにも「富の福音」(アンドリュー・カーネギー著)、「スポーツ栄養学」(寺田新著)、「成功への情熱」(稲盛和夫著)など愛読書は多岐にわたっていたそうです。豊富な読書が、大谷選手の柔軟な思考とぶれない信念の強さの〝源泉〟なのかもしれません。
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