ボクシングの階級世界一を決めるWBSSバンタム級は、準決勝の残る「井上尚弥vsロドリゲス」戦が英国の現地時間18日に迫りました。
練習でも順調な仕上がりのWBA王者・井上尚弥選手。優勝へ俄然期待が高まりますが、大一番を前にあらためて井上選手の最新の戦績を振り返ってみました。
プロでは圧倒的KO率と無敗を誇る「怪物」井上選手ですが、これまで負けたことはあったのか?将来の「頂上決戦」も期待されるロマチェンコ選手との比較もご紹介します。
井上尚弥の戦績最新2019
神奈川県出身で26歳になったばかりの井上尚弥選手。トレーナーである父真吾さんが経営するジムで小学1年からボクシングを始め、中学・高校時代はアマで大変活躍したことでも知られます。
高校1年でインターハイ・国体・選抜の三冠を達成する実力を発揮。アマ時代にはわずかな負けもありましたが、プロ入り後は完全にその才能を開花させます。
12年10月の初試合から今年19年までの7年弱で、17戦全勝(15KO)無敗と3階級制覇という圧巻の戦績は、あらためてご紹介するまでもないほど。
印象的な試合では、昨年10月のWBSS1回戦、元WBAスーパー王者・パヤノ選手を1Rわずか70秒で〝瞬殺〟した防衛戦や、同年3月のWBA王者マクドネル選手をわずか1RでKOした3階級制覇試合などが挙げられます。
井上選手自身が「過去最高のパフォーマンス」に挙げるのは、14年末にWBOスーパーフライ級王者となったナルバエス戦。ナルバエス選手は当時、過去20年間159戦で1度もダウンしたことがない「絶対王者」でしたが、井上選手はわずか2Rで、4度のダウンを奪ってKO勝ちしました。
井上尚弥選手の最新戦績一覧は以下の通りです。
戦 | 日付 | 勝敗 | 時間 | 結果 | 対戦相手 | 国籍 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2012年10月2日 | 勝利 | 4R 2:04 | KO | クリソン・オマヤオ | フィリピン | プロデビュー戦 |
2 | 2013年1月5日 | 勝利 | 1R 1:50 | KO | ガオプラチャン・チュワタナ | タイ | |
3 | 2013年4月16日 | 勝利 | 10R 1:09 | TKO | 佐野友樹(松田) | 日本 | |
4 | 2013年8月25日 | 勝利 | 10R | 判定3-0 | 田口良一(ワタナベ) | 日本 | 日本ライトフライ級タイトルマッチ |
5 | 2013年12月6日 | 勝利 | 5R 2:51 | TKO | ヘルソン・マンシオ | フィリピン | OPBF東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦 |
6 | 2014年4月6日 | 勝利 | 6R 2:54 | TKO | アドリアン・エルナンデス | メキシコ | WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ |
7 | 2014年9月5日 | 勝利 | 11R 1:08 | TKO | サマートレック・ゴーキャットジム | タイ | WBC防衛1 |
8 | 2014年12月30日 | 勝利 | 2R 3:01 | KO | オマール・ナルバエス | アルゼンチン | WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ |
9 | 2015年12月29日 | 勝利 | 2R 1:20 | KO | ワーリト・パレナス | フィリピン | WBO防衛1 |
10 | 2016年5月8日 | 勝利 | 12R | 判定3-0 | デビッド・カルモナ | メキシコ | WBO防衛2 |
11 | 2016年9月4日 | 勝利 | 10R 3:03 | KO | ペッバーンボーン・ゴーキャットジム | タイ | WBO防衛3 |
12 | 2016年12月30日 | 勝利 | 6R 1:01 | TKO | 河野公平(ワタナベ) | 日本 | WBO防衛4 |
13 | 2017年5月21日 | 勝利 | 3R 1:08 | KO | リカルド・ロドリゲス | アメリカ合衆国 | WBO防衛5 |
14 | 2017年9月9日 | 勝利 | 6R 終了 | TKO | アントニオ・ニエベス | アメリカ合衆国 | WBO防衛6 |
15 | 2017年12月30日 | 勝利 | 3R 1:40 | TKO | ヨアン・ボワイヨ | フランス | WBO防衛7 |
16 | 2018年5月25日 | 勝利 | 1R 1:52 | TKO | ジェイミー・マクドネル | イギリス | WBA世界バンタム級タイトルマッチ |
17 | 2018年10月7日 | 勝利 | 1R 1:10 | KO | ファン・カルロス・パヤノ | ドミニカ共和国 | WBA防衛1 |
18 | 2019年5月18日 | – | – | – | エマヌエル・ロドリゲス | プエルトリコ | WBA・IBF世界バンタム級王座統一戦 |
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ロマチェンコと比較してみた
そんな「ザ・モンスター」井上尚弥選手とよく比較されるのが、現WBAスーパー・WBO世界ライト級統一王者で、全階級ランキングPFP1位に君臨する「高性能マシン」ワシル・ロマチェンコ選手です。
31歳のロマチェンコ選手はアマ時代には北京、ロンドン五輪を連覇した母国の英雄。プロ転向後は世界最速の3階級制覇を遂げるなどこれまで14戦13勝(10KO)で、負けが1試合という戦績です。
戦績内容をを比較してみましょう。
【アマ戦績】
井上:81戦75勝(48KO/RSC)6敗
ロマ:397戦396勝1敗
【プロKO率】
井上:88.2%
ロマ:76.9%
【KOまでの平均ラウンド数】
井上:4.7ラウンド
ロマ:7.1ラウンド
さすがにアマの実績は五輪金メダルを2つも持つロマチェンコ選手が圧倒的ですが、プロ入り後は同じ3階級制覇者でもあるほか、KO率やKOラウンド数では井上選手の方が上。いかにパンチ力が強烈かが分かります。
ロマチェンコ選手の最新戦績一覧は以下の通りです。
戦 | 日付 | 勝敗 | 時間 | 結果 | 対戦相手 | 国籍 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2013年10月12日 | 勝利 | 4R 2:59 | KO | ホセ・ラミレス | メキシコ | プロデビュー戦・WBOインターナショナルフェザー級タイトルマッチ |
2 | 2014年3月1日 | 敗北 | 12R | 判定1-2 | オルランド・サリド | メキシコ | WBO世界フェザー級タイトルマッチ |
3 | 2014年6月21日 | 勝利 | 12R | 判定2-0 | ゲーリー・ラッセル・ジュニア | アメリカ合衆国 | WBO世界フェザー級王座決定戦 |
4 | 2014年11月22日 | 勝利 | 12R | 判定3-0 | チョンラターン・ピリヤピンヨー | タイ | WBO防衛1 |
5 | 2015年5月2日 | 勝利 | 9R 0:50 | KO | ガマリエル・ロドリゲス | プエルトリコ | WBO防衛2 |
6 | 2015年11月7日 | 勝利 | 10R 2:35 | KO | ロムロ・コアシチャ | メキシコ | WBO防衛3 |
7 | 2016年6月11日 | 勝利 | 5R 1:09 | KO | ローマン・マルチネス | プエルトリコ | WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ |
8 | 2016年11月26日 | 勝利 | 7R 終了 | TKO | ニコラス・ウォータース | ジャマイカ | WBO防衛1 |
9 | 2017年4月8日 | 勝利 | 9R 終了 | TKO | ジェイソン・ソーサ | アメリカ合衆国 | WBO防衛2 |
10 | 2017年8月5日 | 勝利 | 7R 終了 | TKO | ミゲル・マリアガ | コロンビア | WBO防衛3 |
11 | 2017年12月9日 | 勝利 | 6R 終了 | TKO | ギレルモ・リゴンドウ | キューバ | WBO防衛4 |
12 | 2018年5月12日 | 勝利 | 10R 2:08 | TKO | ホルヘ・リナレス | ベネズエラ | WBA世界ライト級タイトルマッチ スーパー王座認定・リングマガジン王座獲得 |
13 | 2018年12月8日 | 勝利 | 12R | 判定3-0 | ホセ・ペドラザ | プエルトリコ | WBA・WBO世界ライト級王座統一戦 WBA防衛1・WBO獲得 |
14 | 2019年4月12日 | 勝利 | 4R 0:58 | TKO | アンソニー・クローラ | イギリス | WBA防衛2・WBO防衛1 |
負け試合は?
最新戦績をみても「世界最強」ロマチェンコ選手に引けを取らない井上尚弥選手ですが、そんな井上選手もアマ時代には何と負け試合が6つもありました。
メディアでも井上選手自身、過去の負け試合から学ぶことが多く、練習姿勢を変えるきっかけになるなど、今の強さに生きていると語っています。例えば日本人相手で唯一負けたのが、高校2年のとき、初出場の全日本アマ選手権決勝で対戦した林田太郎選手。
この時井上選手は苦手のボディを攻められ完敗。ただ翌年の全日本決勝で再び対戦した際は、井上選手が圧倒しリベンジを果たしました。
また19歳の時、目指していたロンドン五輪予選のアジア選手権で、カザフスタン選手に判定負けを喫し五輪出場権を逃したのも、井上選手いわく「忘れられない敗北」。気負いすぎが敗因だそうで、これを機に試合では平常心を心がけるようになったそうです。
↓アマ時代の井上vs林田戦
井上尚弥の最新ネットの反応
出典:twitter
まとめ
「日本人で唯一怪物に勝った」林田選手も、井上選手との再戦で負けると「とてもこの差は埋められない」とその実力の凄さを痛感。プロにはならずに現役を退く決断のきっかけになったといいます(林田さんは現在母校ボクシング部のコーチ)。
敗戦を含めて、少年時代の数々の経験をしっかり現在の糧にしている井上選手。優勝が期待される今年のWBSS後は、4階級、5階級目へとステップアップも予想されます。近い将来、ロマチェンコ選手との「夢の世界戦」が見られるでしょうか。
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